経営者インタビュー

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『消防および安全用品の需要は伸びている』 ~パキスタンの消防用品製造会社役員に聞く

2018年10月26日(金)16:00

(Pakistan/パキスタン)

 

Haseen Habib Corporation Pvt. Ltd. 

Mr. Tahir Ata Barry (Deputy Managing Director)

Pakistan

 

AOTSが提供する研修プログラムには、新興国を含む海外諸国から多くのビジネスパーソンが参加しています。対象参加者の職位は研修プログラムによって異なりますが、経営者層に向けたプログラムも提供しています。

 

今回は、パキスタンにて消防用品を製造する会社の役員にお話をうかがいました。

パキスタンで最大の消防用品製造会社

Haseen Habib Corporation Pvt. Ltd.は、1965年に設立された家族経営会社で、現在二代目です。約170人の社員がおり、消防用品の製造および輸出入を行う会社としては、パキスタン国内で最大です。
 
当社の主要製品は、消火器、消防車、レスキュー車、泡消火薬剤装置、その他の消火機器です。また、耐火製品、救助用具、防犯対策製品の販売も行っております。当社の強みは、当業界における50年以上に渡る経験から築いた、政府を含めた顧客の皆様との間にある信頼関係です。また、当社では、いずれの競合他社にもない程多数の商品を一度に扱っており、それもまた当社の強みです。Haseen Habibは、Barry Groupのグループ会社です。当グループには、ソフトウェア、モニタリングおよび検査機器などを扱う会社もあります。

 “上司”や“従業員”という言葉を排除

当社では、社員を当社にずっと留めるための最大限の努力をしています。よって、離職率は非常に低いです。社員の研修や教育を行う一方で、彼らが最大限、自主的に仕事を出来る権限を与えています。セールスチームや技術チームからは、定期的に責任者に研修を受けさせるようにしています。“研修のための研修”です。また、当社には顧客に対して消防の研修を行っている部署もあります。
 
互いに敬意を表することは非常に大切なことなので、当社は最近、社内の全ての文書や会話から“上司”や“従業員”という言葉の使用をやめる取り組みを始めたところです。それによって、誰もが親しみを深め、劣等感を感じることなく、互いの尊厳が保たれるのです。

消防用品市場は成長し続けています

消防および安全用品の需要は増加し続けており、市場は成長しています。ここ最近政府は、以前に比べて非常に厳格な政策を策定し、消防設備は拡大し、関連機関においては消防車の台数が追加され、有能で経験のある重役が配属されるなどの再編成が行われました。

 

私たちにとって最大の競合者は、中国です。市場では、誰もが価格にこだわりますので、新規の顧客を説得することは時に困難です。他の国々が感じているように、やはり中国は最大の競合者であり、現在開発途中の中国パキスタン経済回廊(CPEC)のもと、中国はさらに競争力を強くするかもしれません。CPECとは、パキスタン国内の道路および産業などのインフラ構築や、深水港の開発を中国が手がけた巨大プロジェクトです。

 

現在、当社が直面する課題として、パキスタンでは現在、支払い期限を90日から120日に延長する大手の製造会社が増えてきました。これには、運営資金の損失や、キャッシュフロー問題を引き起こすリスクがあります。また、支払遅延も購買手続きの障壁となり、ゆえにプロジェクトが滞ってしまいます。

 

よって我々は、事業を拡大するためにジョイントベンチャーを組めるビジネスパートナーを探しています。もう一つの対策として、株式会社から公的有限会社になるという方法もあります。技術力の面では、当社は強力で安定もしていますので、オートメーションやマルチタスクの導入をすれば、今よりさらに業務の速度を上げることが出来るでしょう。

ソフトウェア&ハードウェアで合弁会社を

海外取引に関しては、中東、アフリカ、アフガニスタン、スリランカ、バングラデシュに主に輸出をしていますが、国内と比べるとシェアは少なく約5%です。国内向けの販売が約95%です。オランダやドイツなどヨーロッパ諸国への事業拡大を望んでいます。我々の提供する製品に関して、価格と安定性では自信があるのですが、ヨーロッパで販売をするには、必要となる認証が数多くあるのです。それらの認証は非常に高額です。もしも、現地にパートナー企業を見つけることが出来れば、成功のカギになると思います。認証を取得し、我々の販売代理店として当社がパキスタンで製造する製品を販売していただければと思います。
 
日本企業との協業の展望もあります。日本へ向けて機器を売るのではなく、日本企業とパートナーシップを結び、当社の製品を日本で世界に向けて販売するのです。合弁会社を設立し、共同で機器を開発するという方法もあるでしょう。
 
もうひとつ、我々が非常に興味を持っていることは、AI(人工知能)を使用した機器を、消防、安全、救助、医療、その他の分野で開発し、パキスタンでプログラムして日本で製造することです。ソフトウェアとハードウェアの関係の合弁会社です。なぜならば、当社にはソフトウェア開発の経験もあり、パキスタンは、世界的に見ても高品質なソフトウェア開発で有名だからです。

責任感は品質に表れる

今回、AOTSのプログラムに参加した理由は、ビジネスを更に拡大する機会を探すためと、当社の業務プロセスの改善法を知るためです。また、オートメーションを利用した製造プロセスにも興味があります。私の会社のコンピューター技術およびオートメーション技術は非常に優れておりますが、日本企業で実際にどのようにオートメーションシステムが利用され製造業務が行われているのかを見てみたかったのです。労働賃金が安いため、システムのオートメーション化と労働力を同時に維持していくということが課題です。
 
日本で製造ラインを見てこれまでに発見したことは、パキスタンの製品よりも質は良いのですが、使用されている技術はパキスタン国内のいくつかの優良企業で見られるものと同じレベルだと思います。私の会社で使用しているプロセスともほぼ同様でした。しかしながら、製品の品質は、作る人間の内面を表すと私は信じています。製造する人の責任感が品質として表れるのです。ですから、責任感を高める研修を受けることも大事だと思います。
 
ありがとうございました。