茂田井純子さん/2023年度修了者

技能実習生・特定技能人材との向き合い方

技能実習生や特定技能外国人材への日本語教育は、語学指導だけでなく、生活支援や文化理解まで幅広い対応が求められます。2023年度にAOTS教師研修を修了された茂田井純子さんに、教育現場での実践と課題、そして今後の展望について伺いました。

日本語教師になったきっかけを教えてください。

私はもともと日本語教育とは無縁の会社員生活を30年間続けていました。子どもの大学卒業を機に、日本語教師養成講座(420時間)を修了し、前職のつながりから監理団体を紹介していただき、技能実習生の入国後講習における日本語と生活習慣の指導を始めました。

教師養成講座を受けていた頃は、日本語学校で働くイメージしか持っていませんでしたが、実際には監理団体での講習が初めての教育現場となりました。コロナ禍で仕事が減った時期もありましたが、現在は日本語教師としての活動が広がっています。

現在の教育活動について教えてください。

現在は株式会社シーマスアノーズに所属し、技能実習生や特定技能外国人材に対して、日本語教育と生活習慣の指導を行っています。

技能実習生は、インドネシア、ベトナム、ミャンマー、バングラデシュ、フィリピンなど多国籍で、年齢も19歳から45歳までと幅広いです。活動分野は建築、食品加工、農業、介護など多岐にわたります。

特定技能外国人材は主にインドネシア出身で、食品加工、農業、介護分野で働いています。生活指導では、部屋の片づけ方、ゴミ出しの指導に加えて、転入出届、健康診断、賃貸契約、銀行口座開設のサポートなど、幅広く携わっています。

このほかに、インドネシアで特定技能の候補者向けの学校を作るという話に関わることになり、立ち上げから現在まで携わっています。この教育機関では、ひらがな・カタカナから学習をスタートし、JFT-Basic合格、技能評価試験合格を目標にしています。私は週1回オンライン授業を行うほか、年に2回時期を決めて1週間程度現地で授業を行っています。日本人となかなか話す機会がない彼らにとって、日本人と話す機会は貴重です。

授業内容や教材について工夫していることはありますか?

インドネシアの学校では、現地の先生と相談しながら「いろどり」を使用しています。教材の準備時間が少なく、ダウンロード可能な点が非常に便利です。

オンライン授業では、現地の先生には、なかなか難しい「普通の会話」に重点を置いて「料理の作り方」や「日曜日の過ごし方」などこちらからも質問がしやすいような内容でテーマを決めて発表してもらっています。また、日本企業との面接が近い場合は、面接練習も行います。質問の言い回しが変わると理解できなくなることがあるため、さまざまな表現を練習しています。

授業では、日本の生活や職場で絶対に必要となる数字や時間の聞き取り、命令形、フィラー、オノマトペの使い方なども重点的に指導しています。動画を活用した授業も取り入れ、視覚的な理解を促進しています。

教育現場で特に注意していることは何ですか?

時間厳守や宿題提出の徹底、大きな声での返事、自分からの挨拶など、基本的な生活態度の指導を重視しています。彼らは日本の風景が新鮮で、写真を撮るのが好きなのですが、人が写らないように、そして、それをSNS等に勝手にアップロードしないようにということは何度も厳しく伝えています。日本での生活において、こうした習慣が職場や地域社会での信頼につながると考えています。

AOTS教師研修を受講した動機と得られた成果について教えてください。

養成講座で知り合った友人の紹介で研修に参加しました。初めて配属された講習センターでは先輩教師が不在で、文法の教え方などに不安を感じていたため、他の教師の話を聞いて改善したいという思いがありました。

AOTS教師研修では、技能実習制度や法的な仕組みを改めて確認でき、自信につながりました。また、技能実習1号・2号の筆記試験や実技試験、介護の資格制度などについても理解が深まったことで、効果的な指導方法を考えられるようになりました。

教材の選定の幅も広がり、「ゲンバの日本語」「あたらしいじっせんにほんご」など、現場に即した教材を知ることができました。また、受入企業や実習生へのインタビューは非常に参考になりました。

教育現場で感じている課題はありますか?

母国での学習期間が3〜6か月と短いため、ひらがな・カタカナが読めない、書けないまま入国する方も少なくありません。また、実習生の日本語レベルに差があるため、授業のペース配分には常に試行錯誤が必要です。

入国後講習だけでは限界があるため、配属先で困らない程度のコミュニケーション力を育てるには、母国の送出機関との連携が不可欠です。今後、連携を強化していきたいと考えています。

今後の展望について教えてください。

技能実習生や特定技能人材と接する中で、彼らが日本を選び、日本のために働いてくれていることに感謝の気持ちを持ち続けています。彼らが言葉の壁で生活が辛くならないよう、教育現場での改善を続けていきたいと思っています。

日本語教師として、言語教育だけでなく、彼らが日本で幸せに生活できるように、生活指導も含めた包括的なサポートを提供することが、今後ますます重要になると感じています。