矢澤健太朗さん/2024年度修了者

技能実習生と向き合う日本語教育──現場から見えた課題と改善の取り組み

兵庫県淡路島に拠点を置くIBCA(国際ビジネスコンサルティング事業協同組合)では、技能実習生を中心とした日本語教育が行われています。2024年度AOTS教師研修を修了された矢澤健太朗さんに、現場での取り組みや課題、そして改善の工夫について伺いました。

現在、どのような日本語教育に携わっていらっしゃいますか?

私は日本語教師として約20年の経験がありますが、2023年からIBCAで技能実習生を中心とした日本語講習を担当しています。IBCAでは、実習生が共同生活を送りながら、企業配属前の約1か月間、週5日・1日8時間の入国後講習を受けます。

この講習では、日本語だけでなく、生活指導も含まれており、実習生が日本での生活や職場環境にスムーズに適応できるよう支援しています。

IBCAで受入れている人材について教えてください。

IBCAの受入れ人材は、在留資格の違いによって大きく3つに分かれます。

  • 技能実習生:主にベトナムから来日し、建築、農業、食品製造などに従事します。彼らは日本語の基礎を母国で学んだ後、IBCAでさらに実践的な講習を受けます。
  • 特定技能外国人:ミャンマー、フィリピン、インドネシアから来日し、建築や介護職に就きます。介護職向けには、専門的な日本語と業務知識を組み合わせた講習を提供しています。
  • 高度外国人材:ミャンマー出身のエンジニアが多く、施工管理などの専門職に従事します。彼らには、建築専門用語やビジネス日本語、ビジネスマナー、安全衛生教育などを含む講習を行っています。

講習内容について詳しく教えてください。

技能実習生向けの講習は、日本語教育と生活指導の2本柱で構成されています。日本語教育では、場面シラバスと機能シラバスを併用し、実際の職場や生活で必要となる言語活動に焦点を当てています。

教材は「いろどり 生活の日本語 入門」「ゲンバの日本語 基礎編」などに加え、オリジナル教材も使用しています。授業では聴解と会話に重点を置いています。

生活指導では、掃除の仕方やゴミの分別、報告・連絡・相談の習慣づけなど、日常生活に必要なスキルを教えています。これらは企業配属後のトラブルを防ぐためにも重要な要素です。

実習生の日本語力や学習意識について、どのような課題がありますか?

ベトナム人技能実習生は、入国前に3〜5か月の日本語学習をしており、入国時点では「みんなの日本語 初級Ⅰ」の25課まで学習しています。「日本語教育の参照枠」で言うとA1レベル相当です。

また、外国語学習の経験が乏しく、母国での学校教育も熱心に受けてこなかった方が多いため、学習方法やノートの取り方を知らないケースが多く見られます。

そのため、企業配属までの1か月間で、「日本語力の向上」「学習方法の定着」「学習意欲の向上」の3点を促さなければなりません。

AOTS研修を活かした現場での改善について教えてください。

実習生が配属される企業への聞き取り調査から、いろいろな課題がわかってきました。特に重要だと感じたことは、「報告・連絡・相談・確認ができるようにする」「規則厳守・掃除・整理整頓の意識向上」「指示に対して不明点をすぐ質問できるようにする」といったことです。

これらの課題は、単なる言語能力だけでなく、態度や習慣にも関わるものであり、教育の中で包括的に取り組む必要があります。そこで、AOTS教師研修の受講中に、研修で得た知見をもとに、実践現場での改善に取り組みました。特に「日本語講習と生活指導の連携」を意識しています。

日本語講習と生活指導をどのように連携するのでしょうか?

報告・連絡・相談の習慣を生活指導に組み込むことにしました。例えば、掃除が終わったら報告する、調味料がなくなりそだったら連絡する、体調が悪いときはすぐに相談するなど、日々の生活の中で習慣化します。ここで大切なのが、指示が伝わったかを教師が確認するとき、「わかりましたか」と聞かないことです。何が、何を、いつ、など、5W1Hについて質問し、聞き取れているか確認するように心掛けています。

今後の課題について教えてください。

AOTS教師研修で学んだことのまだ60%しか実践できていません。今後もやるべきことが山積みです。

まずは、「入国した実習生の日本語力向上」です。現在は「聞くこと」「話すこと(やり取り)」においてA1~A2レベルを目指していますが、今後は5つの言語活動すべてにおいてA2レベルに引き上げることを目標としています。このために、シラバス、カリキュラム、教授法、教材、評価法を抜本的に見直す必要があります。

そして、「入国前の日本語教育の質的向上」も課題です。ベトナムにある送出機関の教員とのさらなる連携強化を目指します。

最後に、「自律学習の定着」です。実習生には宿題を課していますが、彼らにとっては「させられている」学習になっているのが現状です。今後は、目的をもって自分の意思で日本語を学ぶ「自律学習」へと意識変化を促していきたいです。

今後、外国人就労者の受入れはさらに進んでいくと思いますが、日本語教師として何ができるのか、何をするべきなのかを模索し、実践していきたいと思っています。