経営者インタビュー

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『AOTSプログラムで習得した日本のビジネス習慣を母国に活かしたい』 ~セントルシアで自動車販売を行う会社の業務部長に聞く

2018年2月16日(金)10:00

 (St. Lucia/セントルシア)

 

Northwest Ltd.
Mr. Anderson Duane Auguste (Operations Manager)
St. Lucia

 

AOTSが提供する研修プログラムには、新興国を含む海外諸国から多くのビジネスパーソンが参加しています。対象参加者の職位は研修プログラムによって異なりますが、経営者層に向けたプログラムも提供しています。

 

今回、セントルシアにある自動車販売会社の業務部長にお話をうかがいました。

日本車の新車販売をしています

Northwest Ltd.は、1983年に設立された自動車販売会社です。役員3名を含む37人の社員と共に、首都に拠点を置き全国に製品とサービスを提供しております。当社は、新車、自動車部品、バッテリー、オイル、タイヤ等の販売をしており、また自動車修理やフリートマネジメント(メンテナンス・管理)も行っております。日本からいすゞおよびマツダを、韓国からKiaを、そして南アフリカからはFordの新車を輸入しています。

ドアを開放しアクセスしやすく

-御社の経営方針についてお聞かせください。
 
当社の基本的な経営方針は、顧客にとって、そして特に社員にとってアクセスしやすいオープンな管理体制であることです。中間および上部の管理者に対して、常にコンタクトを取りやすい環境づくりをしております。

大学での職業教育

-途上国ゆえの課題にはどのように取り組んでいますか?

 

今回AOTSのPQM(品質経営研修)プログラムに参加した理由のひとつは、顧客満足の向上です。これは、会社にとって適切な規定フォーマットがない場合、非常に困難な課題となります。今回のPQMプログラムのおかげで、私の国にもフォーマットが出来ることになります。それによって、我々が現在直面している顧客満足に関する問題を軽減できるはずです。

 

私の国の人口は、16万人です。電車が無いので、通勤には皆、バスを使います。車を所有する人もいるのですが、平日は街中の駐車場の問題もあるため、ほとんどはバスで移動するか、またはプーリングシステム(カーシェアリング)を利用しています。近年、私の国では中古車販売業が流行しているため、私の会社が直面している大きな課題は、新車よりも輸入中古車を購入する人が増えているという現状です。中古車も新車と同様に、ほとんどが日本から輸入されているにも関わらず、中古車販売を規制するルールは存在しない一方で、新車販売は国の規程に従わなければなりません。中古車販売は自己管理を任される一方で、新車販売は業務を続けるために製品およびサービスに関する数々な厳しい基準を満たさなければならないのです。私はこの件について、公平な競争をするためには、与えられた条件も平等であるべきであると長年訴えてきました。競業の場は世界中の誰にとっても有益なものであるべきなのです。しかしながら、グローバル化が進み、また民主主義国家に住んでいる以上、現状を変えることは困難です。ですから、現状において、どのように輸入を規定化するかを学ぶ必要があるのです。中古車は、新車のボンネットの価格で購入することができますし、また日本から輸入する中古車のコンディションは完璧で、新車同様に機能します。経済事情の悪い国には、景気を回復させる安定した中間層がいませんから、産業はどうしても新車でなく中古車に傾いていくのです。

 

また、ビジネスの場において専門分野に関する研修を受けている人材が不足しています。例えばサービス管理責任者やサービスアドバイザーなどです。私は、より有能な社員を育てるために、販売や整備業で求められる技術や基準を満たすためのシラバス(学習計画)を作成するために自動車販売側と話し合いをしてもらえるように何年間も高等教育機関に働きかけを行ってきました。最近では、学生に対する講義の依頼を頻繁に受けており、私自身も非常に楽しんで講義をしています。大学側とは、非常に良好な関係を築くことが出来ており、これまでの方法を見直し、より現実的な科目を学習要項に取り入れるために協力をしています。我々が互いに協力し、学生に対して業種ごとに異なる教育や研修を受けさせることで、卒業時には既に職業に就ける準備が整っている状態にするのです。
 

我々の業界が抱えるもう一つの課題は、物流です。多かれ少なかれ、製品は国外から取り寄せるしかなく、配送の遅延に大きく作用されることになり、製品の入手が困難になると目的を達成することが困難になります。製造業者の中には、納品にかかる時間の短縮をさせるため、部品の配送センターを北アメリカに移設した者もいます。

まずは既存の製造業者からの購入を増やす

-海外とのビジネスに対する展望をお聞かせください

 

世界のビジネス市場は、我が社のような会社にとっては常に苦戦を余儀なくされる場となります。なぜならば、ミクロ市場は海外企業の目に留まることがないのです。販売業は、顧客を維持するための手段として製品販売後のアフターサービスを重視します。大規模市場において顧客維持のために用いられる戦略は、ミクロ経済で同じように効果を発するとは限りません(例えば品質保証書の発行など)。平均賃金は非常に安いため、逆に損失が出てアフターサービスの質を低下させてしまうかもしれません。これらのような真の問題を解決するため、安定した市場を確保できるよう、より細かな分析と対策の準備が必要であると思います。
 

ビジネスを成功させるためには、拡大戦略を常に考えておくべきです。我が社の場合は、既存のサプライヤーからの購入量を増やすことをまずは目標にしていますので、現時点で新たなサプライヤーを求めることは考えていません。

 

我々には、農業や漁業のように、輸入量をコントロール出来るような長期的な経営戦略がありません。様々な分野において自立のためのプロジェクトを立ち上げ、国として発展させるために立ち上がるべきであると思います。ビジネスとして、競合出来るいくつかの製品はあるものの、新車販売は競合他社と中古車販売業の流入のダブル攻撃を受けています。

PQMプログラムを通じて効果的な業務習慣を得る

私の国、あるいはカリブ海地域におけるビジネス習慣は、ゆっくりと発展をしてはいるものの未だ理想的とは言えません。多くの国民の考え方は未だ依存的で、それが進歩の妨げとなるのです。政治は、労働者に対して、国の成長をもたらすための自立を促すのではなく、政府に任せるという姿勢を潜在的に教育します。ですから、PQMのようなプログラムは我々のような途上国にとって非常に重要なのです。成功例である日本のビジネス習慣が作り上げた効果的な業務習慣を完全に習得することができ、方向転換が出来るようになるからです。プロジェクトを長く持続可能なものにするためにも、日本からの補助金が支給されれば、このプログラムはさらに有益なものとなるでしょう。
 
私の会社は、人材育成を優先するため、専門の自己啓発施設でのワークショップを設けたり、時間外または休日での活動を開催したりしてきました。これらは成功してきたと感じていますが、個人としての自立だけでなく、どうすればグループとして全体のモチベーションを高められるのかが常に課題です。

習得した知識を母国に持ち帰り役立てたい

1993年、日本人の労働規律と倫理を初めて知りました。その日から今日まで私は、その倫理と規範を手本にして真似をするよう努力してきました。私が教えられたことは、階級に関わらず成功をするためには基盤の上にしっかりとした経営体制が築かれていなければならないということです。あれから20年以上が経ち2度目の来日をしましたが、マイナスな変化は何もなく、むしろさらに大きく発展をしている日本を見て驚きました。助けを求めると常に手を貸してくれる日本人の姿勢には心から魅了されます。
 
私が日本で訪れた会社は全て有益でした。社外秘の質問でさえ、出来る範囲で答えてくださいました。社員は皆、顧客に提供する製品やサービスに関する知識であふれていました。そして何より、私がAOTSのPQMプログラムで受けた研修内容と全く同じことが、これらの企業の業務に活用されていたことは素晴らしかったです。
 
今回習得した知識を持ち帰り、私の会社、さらには国に活用するのが楽しみです。
 
ありがとうございました。