国際シンポジウム「イギリス・スウェーデンの最低賃金とその動向 -日本との比較-」

2021年2月17日(水)、国際シンポジウム「イギリス・スウェーデンの最低賃金とその動向  -日本との比較-」をオンラインで実施しました。

イギリスはEUを脱退し、今後の経済動向が注目される国です。同国は1999年に最低賃金制度が導入され、継続的に最低賃金引き上げが行われてきましたが、失業率が明確に悪化することなく、経済成長を継続できていました。日本と類似の制度を持っているイギリスの取り組みから、日本がこれから最低賃金の引き上げをどう進めるべきかについて検討しました。

また、スウェーデンでは法定の最低賃金制度はなく、職種別・業種別の労働協約により最低賃金の目安が決められます。法定の最低賃金によらずにヨーロッパの中でも高水準の賃金を維持していられるのは、景気対策及び雇用の流動性を上げるための様々な政策によるものといわれています。また、同国はEUから最低賃金制度導入を求められており、それが今後のスウェーデンの最低賃金政策にどう影響を与えるかについても確認しました。

また、両国における新型コロナ感染症が労働、特に最低賃金にどう影響を与えるかも紹介していただきました。

パネルディスカッションでは事前にいただいていた参加者の皆様からの質問に対して答える形ですすすみ、興味深い議論となりました。


日時: 2021年2月17日(水)15:00~18:30

 

プログラム:
【第1部】

1.基調講演:各国の労働契約と紛争解決の実態
・Sarah Brown 氏(イギリス) 
 シェフィールド大学経済学部教授
・Per Skedinger 氏(スウェーデン)
 産業経済研究所主任研究員/リンネ大学経済学部准教授

 

2.解説:日本・イギリス・スウェーデンの最低賃金政策の相違点・今後の展望
・神吉 知郁子 氏
 東京大学大学院 法学政治学研究科准教授
・山田 久 氏 
 日本総合研究所 副理事長

(記録はこちらからご覧いただけます)

 

【第2部】

パネルディスカッション

パネルディスカッションは参加者の皆様から事前にいただいていた質問に答える形で実施をしました。

以下の観点でディスカッションを行いました。

  • イギリス・スウェーデンの最低賃金決定方法の再確認
  • 最低賃金の目標額(率)・水準の設定について
  • 最低賃金と生産性、失業率の関係
  • 最低賃金制度の執行力
  • 地域ごとに最低賃金を分けるのか、全国一律とするべきか

 

パネリスト: 
・Sarah Brown 氏(イギリス) / Per Skedinger氏(スウェーデン)
・神吉 知郁子氏 /山田 久氏

 

モデレーター: 
 藤村 博之 氏
 法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科長(教授)
 /中央最低賃金審議会 会長

(記録はこちらからご覧いただけます)

 

講師陣

【講演】

Sarah Brown氏

シェフィールド大学経済学部教授

 

【略歴】

1989年にハル大学を卒業し、1990年にワーウィック大学で経済学修士号を取得し、1994年にラフボロー大学で博士号を取得。
2001年にレスター大学の上級講師に昇進。2005年にシェフィールド大学の経済学講座に就任し、2006年から2011年まで講座長を務めた。
IZA(ボン労働研究所)の研究員、シェフィールド政治経済研究所(SPERI)のアソシエイト・フェロー。2001 年からは、労働・年金・労働経済学研究会(WPEG)の労働・年金省運営委員会のメンバーを務めている。
2010年から2013年まで経済社会研究評議会(ESRC)の助成金評価パネルCのメンバー、REF 2014 Economics & Econometrics Sub-Panelのメンバー、2010年から2015年まで英国王立経済学会女性委員会のメンバー、2010年から2016年まで英国王立経済学会大学学部長会議運営グループのメンバー、2013年から2018年まで英国王立経済学会評議会のメンバーを務めた。
2012年、「Household Finances, Intergenerational Attitudes and Social Interaction」と題するプロジェクトで、2年間のLeverhulme Trust Major Research Fellowshipを受賞。

2015年3月、低賃金委員会の独立委員に任命された。

 

【最近の著書】
・Brown S, Greene WH & Harris M (2020) A novel approach to latent class modelling: identifying the various types of body mass index individuals. Journal of the Royal Statistical Society: Series A, 183(3), 983-1004. View this article in WRRO   
・Brown S, Harris M & Spencer C (2020) Modelling category inflation with multiple inflation processes : estimation, specification, and testing. Oxford Bulletin of Economics and Statistics. View this article in WRRO   
・Brown S, Gray D & Montagnoli A (2019) Credit supply shocks and household leverage: evidence from the US banking deregulation. Journal of Financial Stability, 43, 97-115. View this article in WRRO   
Zhu J, Pryce GB & Brown S (2018) Immigration and house prices under various labour market structures in England and Wales. Urban Studies. View this article in WRRO   
・Brown S, Harris, M , Srivastava, P & Zhang, X (2017) Modelling illegal drug participation. Journal of the Royal Statistical Society. Series A (General), 181(1), 133-154. View this article in WRRO

Per Skedinger 氏
産業経済研究所主任研究員/リンネ大学経済学部准教授

 

【略歴】
パー・スケディンガー氏はウプサラ大学で経済学博士号を取得し、ヴェクショーにあるリンネ大学ビジネス・経済学部の非常勤教授を務めている。以前は経済研究所労働組合研究所(FIEF)に勤務し、スウェーデン労働政策評議会(AER)のメンバーを務めていた。雑誌『エコノミスク・デバト』の元編集者であり、ILOとEU委員会が設置したEUの最低賃金に関する専門家グループの元メンバーでもある。2019-2020年には、雇用保護法に関する政府の審問で専門家を務めた。

 

【最近の著書】
Wage Policies and the Integration of Immigrants(Simon Ek and Per Skedinger)

神吉 知郁子(かんき ちかこ) 氏

東京大学大学院法学政治学研究科准教授

 

主な著作に,『最低賃金と最低生活保障の法規制』(信山社,2011年),「最低賃金と生活保護と『ベーシック・インカム』」濱口桂一郎編著『福祉と労働・雇用』(ミネルヴァ書房,2013年),「従業員代表制設計の検討課題」法律時報88巻3号(2016年),「労働法における正規・非正規『格差』とその『救済』」日本労働研究雑誌No.690(労働政策研究・研修機構,2018年1月)など。
           
最終学歴:2010年9月27日 東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了                
専攻(専門):労働法

 

【略歴】
2008年 4月1日〜 日本学術振興会特別研究員(東京大学)
2011年 4月1日〜 東京大学大学院法学政治学研究科GCOE特任研究員
2012年 7月1日〜 ブリティッシュコロンビア大学法学部客員研究員                    
2013年 9月1日〜 立教大学法学部准教授
2020年 4月1日〜 現職 現在に至る

山田 久 氏

 

【学歴】
1987年 京都大学経済学部卒業
2003年 法政大学大学院修士課程(経済学)修了
2015年 京都大学大学院博士後期課程修了、博士号取得

 

【経歴】 
1987年 住友銀行(現三井住友銀行)入行
1990年 同行経済調査部
1991年  (社)日本経済研究センター出向
1993年 (株)日本総合研究所出向 調査部研究員
2011年 (株)日本総合研究所調査部長兼チーフエコノミスト
2013年 法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科客員教授(~16/3)
2016年 法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科兼任講師(現在に至る)
2017年 (株)日本総合研究所 理事
2019年 (株)日本総合研究所 副理事長(現在に至る)

 

【公職】
労働政策審議会・同一労働同一賃金部会委員(2017.4~2020.3)
社会保障審議会・年金部会委員(2018.4~2020.3)
厚生労働省「仕事と生活の調和のための時間外労働規制に関する検討会」委員(2016.9~2017.3)

 

【主要著書】
『賃上げ立国論』(日本経済新聞出版社、2020年)
『同一労働同一賃金の衝撃 「働き方改革」のカギを握る新ルール』
 (日本経済新聞出版社、2017年)
『失業なき雇用流動化 成長への新たな労働市場改革』
 (慶應義塾大学出版会、2016年)
『雇用再生―戦後最悪の危機からどう脱出するか』
 (日本経済新聞出版社、2009年)
『ワーク・フェア―雇用劣化・階層社会からの脱却』
 (東洋経済新報社、2007年)

藤村 博之 氏
法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科 研究科長(教授)、京都大学博士(経済学)

 

【略 歴】
1956年 広島県生まれ
1979年 名古屋大学経済学部卒業
1984年  京都大学経済研究所助手

1990年  滋賀大学経済学部助教授
1997年 法政大学経営学部教授
2004年 法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科教授
2007年 法政大学キャリアセンター長(2011年3月まで)

 

【公 職】
厚生労働省中央最低賃金審議会会長、公益財団法人東京しごと財団理事
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構評議員

 

【著 書】
・『新しい人事労務管理[第6版]』(佐藤・八代と共著) 有斐閣、2019年
・『人材獲得競争―世界の頭脳をどう生かすか』(竹内、末廣と共著)学生社、2010年3月

 

【最近の主要な論文】
・「意図せぬパワハラを防いで人が育つ組織になる」『ビジネス・レーバー・トレンド』2019年10月号
・「『福岡県70歳現役応援センター』の設立にかかわって」『エルダー』2019年9月号
・「優秀な人材は内部養成している企業に集まる」『産業訓練』2019年1月号
・「大学教育と就職活動の関係を考える」『人事実務』2018年12月号
・「企業の競争力を高める外国人材の活用を」『商工ジャーナル』2018年12月号
・「考える集団の醸成が競争力を高める」『中央労働時報』2018年9月、pp.14-18.
・「働き方改革はイノベーションをめざす~新しいものは議論から生まれる~」『愛知経協』2018年8月号、pp.2-6.
・「質の高い社会を維持していくために」『月刊公明』2017年5月号、pp.20-25.
・「高度外国人材は企業の競争力を高める」『東京社会保険労務士会会報』2016年7月
・「グローバル化と日本企業の課題~広い視野を持った経営者をどう育てるか~」『Work & Life 世界の労働』(日本ILO協議会)2015年3月、pp.2-10.
・「70歳現役をめざして」『エルダー』2015年1月号、pp.7-11.