経営者インタビュー

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『長期的な観点で、信頼できる企業と取引したい』 ~インドネシアの帆布バッグやポーチ製造企業社長に聞く

2017年3月8日(水)10:00

(Indonesia/インドネシア)

 

CV D'Create
Ms. Nisa Rakhmania (Owner)
Indonesia

 

HIDAが提供する研修プログラムには、新興国を含む海外諸国から多くのビジネスパーソンが参加しています。対象参加者の職位は研修プログラムによって異なりますが、経営者層に向けたプログラムも提供しています。

 

今回、インドネシアで帆布バッグやポーチの製造を手がける企業を営む参加者にお話しをうかがいました。

 

 

-まず初めに、御社の会社概要についてご紹介ください。

 
CV D’Createは2009年に設立された小規模企業です。「Heejou」というブランド名で、主に帆布のバッグやポーチを生産し、販売業者をs通して商品を販売しています。ジャカルタから約60km離れたボゴールに拠点を置き、従業員17名の工場で、一ヶ月で約3,000個のバッグ、およびポーチを生産しています。
 
-会社を経営していく上で、どのような事を特に大切にされていますか。理念や方針など、大切にしていることを教えて下さい。
 
当社は最新のユニークなデザインによる、丈夫な高品質のバッグやポーチを生産し、質の良い製品を供給したいと考えています。さらに、環境に配慮した製品パッケージで顧客のニーズを満たして信頼されること、環境を保護していきたいと思います。また、特に子供を持つ女性従業員に優しい労働環境を作り、彼女たちが働きながら、子育てできるように他の従業員を手伝い、他企業との差別化を図れるようにしたいと考えています。優秀なチームを作り、共に成功できることを望んでいます。

-自社事業を更に発展・成長して行く上で、成長の妨げとなっている課題はありますか?またその“課題”に対し、どのような手を打つべきとお考えですか?

 

第一に、当社は自社製品を現在、国内市場に広く提供していますが、ターゲットとしている特定の市場があるわけではありません。第二に、まだ優秀なセールス・チームを結成できていません。第三に、経営の技術や知識がまだ十分ではありません。
 
これらの課題を乗り越えるため、まず企業理念を明確にしなければなりません。明確な理念を基に、どの市場に的を絞るべきかが見え、強力なセールス・チームを作ることができます。また、経営能力を定期的に向上させる必要があります。
 

-現在の海外ビジネス展開状況を教えてください。

 

市場が非常に大きいため、成長する機会は大いにあります。ユニークな製品を創り出すため、西ジャワ州のデポックにあるYKK工場にジッパーを特別注文することもあります。当社の全製品はYKKのジッパーのみを使用していて、顧客に質の高い製品を届けるという目的を果たしています。他社が製造するジッパーの品質は極めて低く、当社の求める基準に合いません。長期的な観点で、信頼できる企業と取引したいと思います。今のところ、当社のビジネスはインドネシア国内に留まり、海外には製品を輸出していません。

 

-今後、更なる海外ビジネス展開をお考えですか?また海外ビジネス展開を成功に導くために、貴社が大切にしている事、重視したい事は何でしょうか?

 

はい。マレーシアやシンガポールといったアジアの国で、自社製品を扱う販売業者との取引を望んでいます。生産管理や品質管理を向上させる方法、および海外の人々と良好な関係を築き、付き合っていく方法を知ることが大切だと考えています。この研修を通して日本企業の業務文化を学ぶことで、当社を発展させる方法を学ぶことができるものと期待しています。

 

-貴社ビジネスが属する、自国におけるマーケットの状況について教えてください。

 

Heejouのバッグは、インドネシアの鞄市場において「エスニック・バッグ」というカテゴリーに属しています。この部門には多くの小規模企業が参入しており、毎年、少なくとも約5~10の新しいブランドが誕生しています。この市場には、大手企業が既に1社存在しています。

 

我々はほとんど同じ流通経路を使用しています。この市場には大変多くの販売業者がおり、当社は都市部に約30社の販売業者を持ち、販売業者は最終的な顧客に製品を届けるため、代理店や再販売業者を雇います。

 

一部の販売業者にとって、Heejouのバッグは非常に需要があると考えられています。販売業者を訪れる顧客は、初めからHeejouのバッグを買いたがっています。それは他社製品と比べてデザインが良いからです。他社製品のデザインはありふれていて単純なので、人々は選ぶブランドを変える可能性があります。
 

この市場には約30社の競合相手がいます。製品の品質が高ければ、市場への参入はそれ程難しくはありません。エスニック・バッグを扱う販売業者が当社の販売業者になれることを確かなものとし、製品が市場に簡単に受け入れられるということを確かなものとすることが重要です。

 

-日本を含め、他国と自国における商慣習には違いがあると思います。自国での働き方に関する考え方、業務文化、国民性など、他国との際立った違いがあればご紹介ください。
 
インドネシアに対する私の捉え方は以下の通りです。
 
[労働習慣]
インドネシア人は家族のために楽しんで働いています。週末の休暇を長くとることで、友達や家族と多くの時間を過ごします。
 
[ビジネス習慣]
多くの小規模企業が売り上げの減少を訴える一方、一部の小規模企業は大きく売り上げを伸ばしています。そういった企業は販売方法を変え、オフラインからオンラインに移行しています。定期的に販売業者を教育し、目標を達成しなかった業者を解雇しています。多くの人々はお金のためだけではなく、知識を得たり、所属団体と親密になるために販売業者になりたがります。現在、当社はオンライン市場まで手を広げていませんが、将来的には参入したいと思います。
 
[国民性]
インドネシア人は地域社会の一員になりたいと心から思っています。時々皆で集まり、何かを共に学ぶのが大好きです。
 
-自社人材を育成していく上で、どのような点に注意を払って取り組んでいますか?

 

従業員が良い心構えを持ち、前向きに考え、仕事を上手くこなす方法を学べるように促したいと考えています。そのためには、まず明確な企業理念を立てる必要があります。

 

人材育成においては困難な課題を抱えています。一部の従業員はチームの悪い面ばかり見ようとし、自分達の事だけを考え、大きな夢を持つ勇気がありません。ある意味で悲観的です。

 

-最後に、日本や日本企業についてどのような印象をお持ちでしょうか。日本に来て驚いた事、感動したこと等ありましたら教えてください。

 

日本人はとても礼儀正しく、親切であり、日本に対してとても良い印象を持っています。進んで「すみません」、「ありがとうございます」と言い、決して面倒くさがらないようです。そういう態度にとても感銘を受け、自分も見習いたいと思います。

 

講義を担当する先生が「日本で起業家が大きな会社を持つ場合、会社は自分だけの物ではなく、地域や社会の所有物であるということを考えます。そのため、まず地域社会を支援する方法を考えます。利益はその結果として後からついて来るのです。」と言った時、とても感動しました。

 

これは衝撃的でした。考え方を変え、自分の会社でも同じ事をしなければならないと感じました。いつも自分の事ばかり考えていたのがとても恥ずかしいです。

 

これは、私が日本で学び、滞在している間に気付いたことの一部に過ぎません。ここ日本で、まだもっと多くの新しいことを経験したいと感じています。

ご協力ありがとうございました。