経営者インタビュー

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『より良く変えていくためにはチャレンジをしなければならない』 ~タイの第三次救急医療総合病院を経営する役員に聞く

2019年6月27日(木)10:00

(Thailand/タイ)

 

Pitsanuvej Hospital

Ms. Wansiri Nimpitakpong (Managing Director)

Thailand

 

AOTSが提供する研修プログラムには、新興国を含む海外諸国から多くのビジネスパーソンが参加しています。対象参加者の職位は研修プログラムによって異なりますが、経営者層に向けたプログラムも提供しています。

 

今回は、タイにて第三次救急医療総合病院を経営する役員にお話をうかがいました。

多くの有名病院から紹介を受ける高度医療施設

Pitsanuvej Hospitalは、バンコクから北へ377km離れたピサノロークにある私立総合病院(150床、職員631名)です。1982年にタイ北部で初の私立病院としてSuthep Nimpitakpong医師とNipaporn Nimpitakpong医師により設立されました。Nimpitakpong一家は、ビジネスとして、また社会的責任として当病院の土台作りに大いに尽力してきました。Pitsanuvej Hospitalは、タイ北部の7県の中でも地域の重要な病院として認識されてきました。
 
2015年、一家は、病院を第二次救急から第三次救急医療機関へとレベルアップさせるためにPrinciple Healthcare Group社との合弁事業の立ち上げを決めました。今日、当院は最新の医療技術を完備し、タイの人々のみならずヨーロッパからの駐在者や、ミャンマーおよびラオスからの患者に高度先進医療サービスを提供しています。
 
当グループは、ピチットにSahavej Hospital、ウッタラディットにPitsanuvej Uttaradit Hospitalと計二ヶ所の系列病院を所有しています。また当院は、(居住地と違う国や地域で医療サービスを受ける)医療ツーリズムでピサノロークを訪れる人々に快適なサービスを提供できる医療施設です。また当院は、バンコク内の多くの有名病院から紹介を受ける高度医療施設です。医療機能評価機関 JCI(Joint Commission International) の認証も2012年に取得し、最高の医療サービスを提供しています。

チャレンジをしなければいけない

我々が最も大切にしていることは、”PSV (People Service Value: 人、サービス、価値)”です。「人」については、職員がそれぞれの分野において成功し組織の目標達成のために貢献すること。「サービス」については、クライエント中心の医療サービスを効率よく提供します。そしてこの組織に関わるパートナーに「付加価値」を与えます。
 
何よりも人のためになることをしたいのです。全職員が、それぞれの力を最大限に発揮できるような環境づくりをしています。ほとんどの研修センターは、バンコクにあるので、それらの研修に参加するには時間もお金もかかります。すでに年間80時間以上の研修プログラムがありますが、それでも過去10年間と同じことをしていては、競合業者には勝てないので、知識とスキルをアップグレードする必要があります。より良い組織へと変革するためには、チャレンジをしなければいけないのです。現在、職員の研修もさらに発展コースへの移行を試みているところです。より多くを現場で学びながら、職員は新たな時代に合わせて、高品質なサービスを提供出来るようにスキルや考え方を更新していかねばなりません。
 
当院の人材開発部は、政府が「社員の仲が良い企業」として認めた企業に与える証書の取得申請をしたところです。私達は、社員もステークホルダーも株主も皆、家族であると思っています。

世界的な健康志向と高齢化社会

タイ国内において、私立病院や医療サービス部門のビジネスは、世界的な健康志向と高齢化社会に伴い成長傾向にあり、また2003年にタイ政府が外国人来院者を増やすために立ち上げたthe Medical Hub Policyもまたそれを助長しています。不動産業など多くの大手企業が医療サービス市場に進出しています。このため、タイ国内では私立病院の競争が激化しています。国が管理する政府系病院は、経済的な理由で診療時間を延長することにしました。さらには、政府が実施する“Universal Coverage for Emergency Patients (UCEP)”によって、多くの病院の経営はさらに困難に面しています。このUCEPという政策は、救急患者が無料で医療処置を受けることができ、後ほど政府が病院にその医療費の50%を返済するというものです。しかし、このUCEPのもと私の病院に搬送されたほとんどの救急患者は、UCEPでカバーされる搬送後72時間が経過した後も、当院にそのまま残り治療を受けることを望みますので、この政策は、我々にとってはある意味有益とも言えるでしょう。
 
また、医療従事者が不足しているため、運営費も大幅に上がりました。最近では、より専門的な検査を求め、正確な診断と最良の治療を受けるために、総合診療医よりも専門医に診てもらいたいという患者が増えています。これらの理由で、とりわけ小規模で、都会から離れた場所に建っている、変化に対する順応が遅い病院などは、大型の病院に吸収されているのです。

経済回廊の交差点

タイの経済成長の低迷をうけ、より多くの患者が私立病院よりも国立病院を選ぶようになりました。私立病院は、この状況下で生き残るためには変革を起こさねばなりません。私の病院では、約10年前から、患者の経済状況に応じて治療プランを考えるケースマネジメント・チームを形成しました。
 
現在は、国外とも取引があり、かなり多くの外国人患者が世界中からやってきます。また、ミャンマーなど多くの富裕層が暮らす近隣諸国への事業進出も計画しています。
 
我々の病院は、チェンマイとバンコクの中間に位置するピサノロークにあります。ピサノロークは、政府が5年前から実施している道路を基盤にした新たな経済開発計画である南北、東西経済回廊(LIMEC: Luangprabang-lndochina-Mawlamyine Economic Corridor)の交差する地域でもあります。私は、2年前からピサノローク商工会議所の会長をしていますので、現在は地元の経済発展を目的とした公的な活動にも励んでいます。

新たな時代に求められる医療サービス

昨年の10月、病院長と私は、日本の“シニアケア”を学ぶ目的で来日しました。両国間で、互いに協力し、医療ケアの技術移転や異文化研修を行い、またシニアや障害者むけの革新的な製品を共同開発することが出来ればと思います。
 
さらに、私の家族がWanathara Resort ( www.wanathara.com)というシニア旅行者やリハビリ患者むけのリゾートを所有しています。日本企業と力を合わせればビジネスの可能性は無限だと思います。
 
日本の専門家やタイ人研修生達と知識を共有できればと思い、今回初めてAOTSの研修に参加しました。日本の現場で研修を受け、リーダーとして必要なスキルについて理解を深め、視野を広げ、我々の病院や団体の他のリーダー達とそれを共有したいと思います。この研修を通じて日本とタイの将来的な協働につながる機会や人材育成の専門家に出会い、組織を成功に導く国際的で多文化な方法を習得することが出来ればと思います。
 
新たな時代に求められる医療サービスのために、日本企業と共に働くことが出来ることを願っています。
 
ありがとうございました。
 

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