専門家の声 タイ(ラヨン)

岡田勇弥 専門家
タイ(ラヨン)
派遣期間:2017年6月~2018年3月
指導内容:生産機械の設計に関する指導

肩の力を抜いて

機械設計って、とても面白いんだよということを伝えたい気持ちで、タイでの支援指導の話には、ワクワク感と多少の不安感はあったものの、ふたつ返事の承諾でした。支援先の担当者は3次元CADも使え、工作機械の操作知識も多少ある他、電気設計の現地スタッフも隣の席にいて、電気の事も相談しながら機械設計ができるという恵まれた環境にあります。

今回のテーマは類似機械のコピー設計ではなく新たな顧客からの要求にも応えられるよう仕様書から構想をし、詳細設計、部品図への展開が出来るレベルになってほしい、と膝突き合わせてのスタートとなりました。

「場を清め、時を守り、礼を尽くして、師に学び、やってみて、納得できるまで追求すること」??と、どこか普段の自分ではない、力んだ姿勢で前のめりになり、赴任当初には知らず知らずに厳しい言葉もあったかもしれません。

仕事を離れれば、屈託なく話す彼らの笑顔や気取らない明るい性格に惹きこまれて、笑い声の中で力が抜けて緩んで、タイの陽気な雰囲気に和んでいる自分に気づかされ、今までの時間もただ流れていたのではなかったという親近感や信頼感にホッとさせられて、沢山のことを彼らから逆に教えられました。もう少し傍にいて応援してあげたいと変な親心も芽生えてきて、私にとっても勉強の場であり、成長できた時間でもあったと思います。

自然が人を育てる

日本のアニメを見て日本語を勉強するという職場の通訳スタッフに誘われて、彼の故郷であるパヤオという街に民泊できる機会がありました。チェンマイとチェンライの中間程に位置し、観光に来る日本人はあまり多くないようですが、遠くに見える山々と鏡のような湖が織りなす景色は雄大で、表現の言葉が見つからないくらい美しいところです。

石段を登って山の上まで行くと、立派なお寺の庭に出てパヤオの街が一望でき、深呼吸して、今回の支援の話がなかったら観ることも触れることもなかったタイの深い風景と街の人たちのやさしさ寛容さに、自然と手が合わさり頭がさがり不思議な力を授かったような気がしました。

聡明でスポーツ好きで流暢な日本語で通訳をする彼が再び故郷パヤオを離れる朝に、両親と会話する様子がほほえましく羨ましくさえ思え、手を振る姿に心うたれて熱くなってしまいました。

専門家交流

ほぼ同じ期間に、同じ街に住んでいるということがわかり、週末にでも食事をしながら、飲みながら情報交換しましょうと顔を合わせる機会をつくってくれた専門家と専門家会議に感謝です。日本人が多く住んでいる街での生活とは言っても、初めは孤独感もあり行動範囲も狭くなりがちで、公園のベンチで一人遠くの海を眺めたこともありましたが、週末が楽しみに変わり、嬉しかったです。

派遣終了間際に、日本に戻ってもまた会いましょうと笑顔で別れましたが、世界のどこかでまた同じ街に住むことがあるかもしれませんね。その時もよろしくお願いします。

パヤオの風景

左から通訳のBhanuwatさんのお父さん、お母さん、
岡田専門家、叔父さん

当寄稿は2018年3月23日発行の「AOTSメールマガジン No.84」で配信されました。