専門家の声 中国(江蘇省・宿遷市)

吉水恭司 専門家
江蘇省・宿遷市(中国)
派遣期間:2018年5月~2018年7月
指導内容:木質建材製造における生産性向上による省電力化に関する指導

効果的な指導方法

今回、専門家として派遣されたのは中国の江蘇省にある子会社でした。

そこでは日本の住宅に使用される木材の加工を主に行っております。中国での建築部材の加工品・輸出はまだまだ多くはありませんが、日本国内の建築業従事者(大工さんなどの職人)の人手不足にともない、建築現場の施工日数の削減や少人数での施工など所謂「省施工化」が必要とされています。さらなる需要の獲得を得ることが出来るよう、効率アップを目指し指導を行う事になりました。

初日に全員の前で挨拶を行い、今後の方針や指導の進め方を説明しても殆どの従業員が『我関せず』と云わんばかりで下を向いて聞いていました。この調子でどうなることか…と凄く不安な夜を過ごしました。

工場3S活動指導風景

管理者と一部のお人好しな従業員のおかげで少しずつは進めることが出来ました。改善活動を行って2週間ほど経つと少しずつ協力者が増え、指導を聞く態度にも明らかな変化が出てきました。『なんで???』と私が尋ねると、『改善を行っているうちに少しずつ給料が増えてきた』と、ある従業員が答えてくれました。彼らの給料は完全出来高制で、それが日に日に増えていっているとの事でした。『もっと皆でやれば給料上がるよ』と彼らに伝えると、翌日から全員が協力してくれるようになりました。お互いの利益がバッチリ合った瞬間を感じて取れました。

その後は自主的に改善活動を行ってくれるようになり、講習を行うときや朝礼での私の話を聞く目がガラッと変わりました。なんて現金な人たちなんだと呆れながらも、自分達の暮らしが裕福になるのであれば進んで行う姿に逞しさを感じました。

最後には『老師』とまで言ってくれ、互いに改善活動の成功を喜び合うことも出来ました。今後も彼らは自分達で改善活動や3S活動を続けてくれるということですので、次回の訪中を楽しみにしたいと思います。

食生活について

朝は7時からの仕事でしたので朝6時過ぎに出発して、近くの小籠包屋で小籠包を買って食べました。1人前4元(1元=約17円)です。かなりの繁盛店で、店内で食べる人や持ち帰る人でごった返していました。

昼食は会社の食堂で食べることが多いですが、たまに行く蘭州ラーメンが絶品でした。最近東京でも店舗がオープンしているそうなので帰国したら是非行って味比べをしてみようと思っています。

夜は近所の色々な店で食べたりしましたが、中でも絶品だったのが露店で売っている1本1元の羊肉の串焼きでした。ついつい調子に乗って食べ過ぎてしまい、高級店並みの支払いをすることも有りました。食事はどれも美味しくいただけたので食生活でストレスを感じることも無く過ごせました。

蘭州ラーメン

途中、現地の取引先の会社の幹部と晩御飯を一緒にする事があったのですが、そこで出てくる白酒(バイチュウ)と呼ばれるお酒には何度も苦しめられました。高梁という穀物から作られる度数の高いお酒で、アルコール度数45%前後にもなります。これを小さい杯に注いで皆で『干杯(カンペイ)』と言って一気に飲み干すのです。これを延々と…。

中国のお酒の礼儀のようですが余りお酒の強くない私にとっては迷惑この上ない礼儀でしたが、何とか頑張り彼らとの親交も深まったと思います。

道行く他人にはまったく無関心で少し冷たい印象のあった中国の人たちですが、一旦輪の中に入れてくれれば家族同然の扱いをして下さり、心温まるもてなしを受けることもありました。「今後も彼らの生活が少しでも豊かになり、結果として工場の生産性の向上につながれば良いなぁ」と考え方が少し変わったような気がします。

現地でのひとコマ

小籠包屋

串焼き

管理者たちと(前列中央が筆者)

当寄稿は2018年7月18日発行の「AOTSメールマガジン No.88」で配信されました。