専門家の声 インドネシア(ジャカルタ)

高橋 学 専門家
インドネシア(ジャカルタ)
派遣期間:2019年1月~2019年3月
指導内容:日本式警備業務の適正な運用方法に関する指導

現地スタッフとのコミュニケーション

私の派遣先は、インドネシアの首都ジャカルタでした。私自身、これまで海外旅行の経験もなく、プライベートも含め初の海外であり、更にはインドネシア語の心得もない。まさに何もかもが手探りでのスタートでした。

いざ指導に入ると、通訳を介しての意思疎通ということもあり、伝えたい事が正確に伝わっているか、という不安が常にありましたが、一つの事柄について一つの言葉だけではなく、様々な表現で伝えることで、意図やニュアンスが正確に伝わるよう心掛けました。

また、国や業種を問わないことではありますが、指導される側としては以前からの考え方、やり方を変えるということに対する抵抗感があるのではないかと考え、時間はかかりますが、一つ一つの事柄についてまずは目的や効果をしっかりと説明し、理解させてから具体的な指導を行う、ということを心掛けました。

そんな試行錯誤を重ねていましたが、仕事を通じて実現すべき社会的使命は私も現地スタッフも同じであり、そのことをお互いに認識できた頃には非常ににこやかに接してくれるようになり、また協力の意思を示してくれるようになりました。

現場責任者ミーティング

海外という、私にとっては未知の場所で少し大袈裟に身構えていましたが、この変化を通じて、結局のところ日本人らしく誠意を持って接することがなにより重要なことであると気付かされました。

現地での生活について

インドネシアへの移動当日、首都ジャカルタから少し離れた郊外に位置するスカルノハッタ国際空港に到着し、まず強烈な印象を受けたのは、独特の交通事情でした。道路には車がすし詰め状態で、その隙間を無数のバイクがすり抜けて行く。まさに東南アジアのイメージそのままの光景でした。

インドネシア、特にジャカルタの渋滞は世界一とも言われており、帰宅ラッシュ時には「歩いた方が早いのでは?」と思うほどの渋滞が発生します。交差点では警察官でも警備員でもない、ラフな格好の男性が交通整理をしていて、通してもらった車の運転手はチップを渡す。また、渋滞の隙間を徒歩で移動しながら、運転手や同乗者にティッシュなど日用品を売る女性や子供たち。通勤一つとっても非常に賑やかです。

ジャカルタの高層ビル群

車のみならず、徒歩での移動も一苦労です。歩道はガタガタ。所々に屋台などが腰を据えていて、車道を歩かなければならないこともしばしば。また、絶え間なく車やバイクが行き交っているにも係らず、信号や横断歩道が非常に少ないため、道路の横断には勇気が必要です。

そんな交通事情を改善すべく、私が帰国した直後の2019年3月24日、インドネシア初の地下鉄を含む高速鉄道が開通しました。期待通りの効果が現れたならば、これらの光景を目にすることもなくなるかもしれません。

インドネシアの更なる発展に向けた大きな一歩ではありますが、様々な思い出とともに記憶されたアジアの混沌を再び感じることができなくなるかと思うと、少し寂しいような気もします。

当寄稿は2019年5月15日発行の「AOTSメールマガジン No.99」で配信されました。