専門家の声 ベトナム(ホーチミン)

古尾谷 眞人 専門家
ベトナム(ホーチミン)
派遣期間:2019年4月~2020年1月
指導内容:食品を中心とした無店舗販売用カタログのデジタル制作に関する指導

効果的な指導方法

ベトナム、ホーチミンにおいて「食品カタログ」の制作を技術指導しています。私たちが作る「食品カタログ」は、日本の家庭で注文するための通販カタログです。40ページの冊子の中に、毎日の献立に使う野菜、肉、魚、乳製品、総菜などの食材が1,000点以上掲載されています。

カタログに掲載される食品は毎週変わります。日本からのカタログ制作に関する指示は、日本語による手書きがほとんどで、それらをベトナム人通訳が読み解き、ベトナム人オペレータがパソコン上でカタログを完成していきます。指示の中には、編集・印刷業界で使われる専門用語も含まれます。

こうした専門用語を理解してもらうために、会社で使用しているメッセンジャーソフト(※LINEなどのチャットアプリのこと)を使って、毎日一語ずつ、その解説をベトナムのメンバーへ発信することにしました。まず、私が日本語の解説文を書き、それを通訳のベトナム人がベトナム語に翻訳します。こうすることで、通訳は専門用語への理解を深めることができました。

何十回と発信したのち、ある程度の量の専門用語がまとまったので、用語集として一冊の本にして研修に活用しています。現地のメンバーの中には、AOTSの日本語研修を終えて帰国した者もいます。編集・印刷業界で使われる専門用語には仮名表記が多く、日本語の基礎を学んだ経験がとても役立っています。

指導先のベトナム社員

指導先で作成したマニュアル

現地での生活について

日本の「食品カタログ」を作るときに、必要とされるのが「日本の食文化」の知識です。たとえば、秋にはマツタケが旬であり、誌面にデザインするならば紅葉の赤が基調となります。こうした日本の食文化は四季のないホーチミンで暮らしているベトナム人には理解できません。同じように、私たち日本人が理解しにくいベトナムの食文化もあるはずです。

ベトナム料理でよく言われるのは、中国とフランスという世界の二大料理の影響下にあったことから、食文化がとても豊かであることです。日本人の舌にもなじみやすいおいしさですが、右手に箸、左手にスプーンを持って食するなど、作法は異なります。日本人は、食事のときに使った紙ナプキンを食べ終わった皿に入れたり、テーブルの上に置きますが、ベトナム人はそうしません。ローカルな食堂では、テーブルの下に設置されたゴミ箱に入れるか、ゴミ箱がなければ床や地面に捨てます。床に散らばった紙ナプキンを見て最初は戸惑いましたが、紙ナプキンはほうきで掃除するものであって、お皿を洗うのとは異なります。そう考えれば合理的な作法といえます。

現地での昼食の様子

日本の焼き魚は頭を左にして皿に盛り付ける。ご飯を盛ったお椀は左にし、みそ汁のお椀は右とする。箸は、手で握る太い部分を右にして並べる。こうしたことは私たち日本人が小さい頃から繰り返し身につけた作法です。こうした作法をベースに、食品カタログを作成していきますが、ベトナム人はこうした作法とは無縁のため、知識として身につけてもらうしかありません。

作法は異なりますが、ベトナム人は食事をとても大事にします。とくに夕飯の食卓を家族で囲むことを大事にすることは、今の日本人が見直すべきことかもしれません。こうした食への思いがあるベトナム人ならば、日本の「食品カタログ」の制作でも、きっと良い仕事をしてくれるはずです。そう期待しながら、残る期間で技術指導したいと思います。

 

当寄稿は2020年1月15日発行の「AOTSメールマガジン No.107」で配信されました。