AOTS海外労働関係情報メールマガジン 第79号

Contents

 1.  産業構造改革とその影響
 2.  雇用情勢

産業構造改革とその影響

中国は、2016年度経済成長率6.7%、2017年度6.8%と、適度な速度で経済成長している。ここ数年のゆっくりとした経済成長は、国家戦略として実施されている経済改革、特に産業構造改革のおかげである。企業再編の促進、環境汚染を引き起こす生産の廃止、不動産市場の過熱の抑制、技術革新の支援等、様々な産業構造改革が実施されている。しかし、その改革によって労働市場は多大な影響を受け、構造的失業が生じている。公式統計での失業率は約4%であるが、実際はこれより高い。

産業構造改革によって労働市場だけではなく企業のHRM、HRDでも多くの問題が発生している。自社製品の市場需要に関して楽観的ではない企業が増え、マーケットシェア拡大のために、給料水準を下げる、頻繁に解雇する等、コスト削減努力をしており、これが労働者の企業への忠誠心を失わせる原因になっている。企業が実践する「必要に応じた雇用・解雇」が労働者の雇用の保障・安定を脅かし、勤務態度や生産性に多大な影響を与えている。

雇用情勢

2016年、中国の鉄鋼・石炭・セメント産業は生産能力の削減をせねばならなくなり、多くの労働者が解雇された。この生産能力削減により、鉄鋼・石炭産業だけで約100万人の労働者が2、3年のうちに失業すると予測されている。エネルギー産業・鉱業の雇用指数にいたっては僅か0.57であり、100人が57の求人のために争っていることを意味している。このように、就職活動の競争はかなり熾烈である。

 

このような状況の中で雇用を安定させるために、中国は大学新卒者、余剰労働者、身体障害者、出稼ぎ労働者に向けて数々の雇用政策を展開している。同時に、起業の波が雇用創出に貢献している。過去5年において1年につき1300万を超える雇用が都市で生み出され、都市の登録失業率は4.1%を下回った。

 

中国では現在未だかつてなく若い起業家が輩出されている。MyCOS研究院や中国社会科学院の報告によると、大学卒業後すぐに起業する学生の数は2011年の1.6%から2017年の3%へと増加した。これは、2017年卒の大学生795万人のうち20万人以上が起業家になったことを意味している。

 

また、産業構造改革に影響され、大学新卒者の希望する職業は近年変化してきている。雇用年次報告によると、建設や製造といった労働集約型産業は魅力を失い、情報、教育、医療等の知識集約型産業に就職する大学新卒者が増えている。